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カタールW杯の名勝負ベスト10を振り返ってみた

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初めての冬開催となったカタールW杯は近年稀にみる盛り上がりをみせました。

決勝戦の「アルゼンチン×フランス」歴代最高との評価も納得の、神がかった試合となりました。

そしてサッカーファンの誰もが待ち望んだメッシがW杯を掲げるという、完璧なストーリーで終わりをつげます。

今大会は日本代表の大躍進を含めての逆転劇スター選手の活躍も多く、戦術を凌駕した部分でサッカーの面白さを随所に感じることが多かったです。

観戦した試合数は64試合分の49試合。全体7~8割の試合を見れました。(ロシアW杯は半分程度だったのでけっこう見れた)

今大会で面白かったゲームをランキング形式で振り返ってみます。

10位 カタール0-2エクアドル(GL第1戦)

カタールW杯の開幕戦となった1戦です。

とにかくこの試合のエクアドルのインテンシテイの高さは驚異的で、カタールとの対比でより強さが際立ちました(大会前の日本とのテストマッチのときも、エクアドルの強さにやや絶望感を感じたのを思い出しました)

テクニックや連携も優れているチームですが、最優先はインテンシティで圧倒する戦い方に衝撃を受けました。

9位 イングランド0-0アメリカ(GL第2戦)

アメリカがイングランド相手にかなり戦えていた一戦。
トランジションの早さ、インテンシティ、プレッシング、勇敢なビルドアップなどアメリカの良さが出た試合でした。

特にライトとウェアの2トップの前線からのプレッシングは美しかった。この身体能力と、最先端の戦い方がアメリカサッカーの良さでしょう。

イングランド好きには物足りないと思いますが、アメリカサッカーに興味ある自分としては非常に面白い一戦でした。

8位 オランダ3-1アメリカ(ラウンド16)

若いアメリカ相手にオランダ(ファンファール)が試合巧者ぶりをみせた一戦。
グループリーグでは、エクアドル戦やセネガル戦での苦戦が目立ったオランダでしたが、ついにこの試合でベールを脱ぎます。

オランダがアメリカ相手に魅せた戦い方は非保持とカウンターでした。

トランジションの早さとプレッシングの良さに強みのあるアメリカに、あえてボールを保持させてカウンターを狙うしたたかな戦い方。アメリカは日本と同じく、格上相手にはボールを握った時の方がリズムを出しづらいチームです(日本と同じ)。

この試合でデパイが復調し、一列上げたガクポとの2トップは一気に大会屈指となりました。

7位 アルゼンチン1-2サウジアラビア(GL第1戦)

アルゼンチンの初戦。
サウジアラビアは前半からディフェンスをハイラインに設定し、アルゼンチンとのガチンコ勝負を選択します。前半はギリギリのオフサイドトラップでなんとかPKでの1失点に抑え、後半立ち上がりに一気に逆転。

特に後半は、アルゼンチンに対して1対1で負けてなかった。

世界が驚きアジアサッカーの可能性を感じ1戦は、W杯の面白さと真の意味でのW杯開幕を伝えてくれた1戦でした。

日本戦を除いてGLで一番盛り上がった試合はこれでしょう。

6位 スペイン1-1ドイツ(GL第2戦)

ポゼッションチーム同士の一戦。非常にハイレベルなハイプレスの応酬の試合となりました。

どちらも前からプレッシングをしかけて、技術と連携で交わしたチームが一気に相手ゴールまでボールを運びチャンスを作ります。

前半6分、スペインのダニオルモのミドルは、ニャブリのところでマークずれ。

前半10分、ブスケツの気の利いた動きだしで、ペドリ→ブスケツ→ガビでプレス回避。ドイツは前から果敢にプレスを掛けますが、スペインの高いビルドアップ技術に外されます。

ドイツも前半10分にプレス回避や、前半16分にはCBから左SBラウムへの大きな展開を狙いなど、良い作りもありました。

ただし、ドイツはディフェンスのビルドアップが(スペインに比べると)弱いです。中盤を経由すれば上手いですが、ディフェンス単体の足元技術では局面を打開できず、ノイアーにもどして蹴りだす展開も多かった。それだけスペインのディフェンスの追い込みが上手くいっていました。

 

後半立上りは、ドイツのハイプレスがハマリはじめます。

後半10分、スペインはキーパーに戻してから中央のペドリへの楔をいれますが、ドイツのキミッヒが狙って、一気に決定機まで持ってきます。

キミッヒの狙いすましたインターセプトの狙いにはかなりしびれました。

 

ただ、先制したのはスペインでした。

スペインの得点は、ブスケツの反転から、ダニオルモ、ジョルディアルバと素早くつないで、早いタイミングでいれたクロスをモラタがうまく流し込みます。

スペインがうまく展開したシーンだけど、正直ドイツのCBのズーレの対応が少し甘い。後ろから入ってきたモラタについていけなかった。ドイツからしたらシュートブロックしてほしいシーンです。

 

後がなくなったドイツはついにケガ明けのサネを投入します。

後半27分。直前に入ったサネが右サイドから局面を打開して、相手をひきつけて、スルーマスでムシアラがフィニッシュ。バイエルンのエースが入って、連動性もよくなりました。

後半33分もサネが仕掛けてゴール中央で防がれるも、そこからネガトラで奪い返してFK獲得。

後半37分、ドイツのプレスでラポルトからペドリへのパスがずれて、そこから奪ったドイツが、クロスターマン→サネ→ムシアラ→フィルクルクと繋いで同点弾。

後半のプレスが実を結んだシーンでした。明らかにハイプレスとサネ投入で好機をつかんだドイツです。ムスアラ以外の交代選手の3人が絡んだシーンでした。

 

結局試合は1-1でドロー。

その後スペインは、日本やモロッコのように徹底的にブロックを作れるチームには攻め手が単調になり、敗退します。

ただプレッシング相手にめっぽう強いのはスペインです。ブスケツ、ペドリは相手にマークさえていても、一瞬の時間と空間でターンをして、局面を変えられる選手です。

ドイツはスペインに次にポゼッション力のあるチームなので、非保持に徹する戦い方はできませんでした。戦力はあるので、そんな戦い方をしたらブーイングとなる強国の宿命を背負っています。

よって必然的に打ち合いになった好ゲーム。

ポジショニング、プレッシング、技術のぶつかり合いは素晴らしい試合でした。

5位 ブラジル1(PK2-4)1クロアチア(準々決勝)

ブラジル相手に完璧なビルドアップとポゼッションを示したクロアチア。

日本戦では放り込むサッカーを選択しておきながら、優勝候補のブラジル相手にボールを渡さず主導権を握る戦いができる力量に驚きました。

ブラジルの倒し方は、ボール保持をして、リズムをつくらせないこと。

モドリッチのファーストディフェンス、プレッシング、ポジショニング、インターセプト、コーチングがとにかくすごい120分でした。

僕の中ではモドリッチは歴代最高の8番タイプです。

4位 日本1(PK1-3)1クロアチア(ラウンド16)

トーナメント1回戦のクロアチア戦。

経験面では格上の相手でしたが、コンディションとしては交代やターンオーバーを活用した日本優勢の下馬評でした。

試合もそのとおり、オープンな展開となりました。

クロアチアはボール保持も非保持も、繋ぐ意識も放りこみも、相手が嫌がることを常に選択できるチームです。

日本はようやく鎌田のコンディションが上がって、鎌田・守田・遠藤の3人の調子もよく、この試合ではポゼッションができるようになりました。

日本は前半に1点を先制しますが、後半にはペリシッチに1点返されて1-1で試合は続きます。

そしてここからが、日本がベスト8に進むための真の戦いとなりました。

 

W杯の決勝トーナメントの舞台では、試合に入れて戦える選手がなにより重要。

日本代表は良くも悪くも、システムやポジションにこだわりすぎてる気もします。

ピッチに出てるメンバーが考えながら、どれだけ戦えるか。

そこの連携や準備、経験値がクロアチアに及ばなかった気がします。

課題としては、三笘を活かすためのボール運びが設計されていなかった。

 

そして、三笘を一列前で使えなかったのか、

田中碧を早めに投入して守田や遠藤と共存できなかったのか、システム変更だけでなくウイングバッグやセカンドトップの位置で使う手はなかったのか。

競合国は大一番では、ポジション関係なく戦える強さを感じます。

今大会でいえばクロアチアやアルゼンチンはその筆頭といえました。

 

ここから先は各選手がクラブで経験を積んで、レベルを上げることでしか到達できない気もするので、4年後にさらに世界と戦えるチームになっていることに期待をしたいです。

 

3位 アルゼンチン3(PK4-2)3フランス(決勝)

歴代最高のW杯決勝といっていいでしょう。

メッシがW杯を掲げるために限界までギアを上げた戦いや、最後まで立ちはだかったエムバペの3ゴールも見事でした。

 

アルゼンチンは中盤の選手の距離が近く、サイド攻撃を捨てて、中央に選手を配置。ピッチ中央では常に数的優位をつくり、全員さぼらず、スライド意識の高い戦い方です。

組織的でありながらも、選手の判断に任せた有機的な強さを感じます。メッシ、マカリスター、エンソフェルナンデスのポジショニングは見事です。

 

一方のフランスはミスを連発。デンベレがミスを連発して、テオやグリーズマンも何度かパスミス。体調不良者も多かったらしく、明らかに精彩を欠いていました。

この試合ではチュアメニ、ラビオの限界もみえました。攻撃時のポジショニング、俊敏性、プレーの意外性のなさがもの足りない。

フランスの中では超一流とはいえないセンター二人は、カンテ、ポグバの完成度に比べるとやはり劣ってしまいます。マカリスターにマンマークされてグリーズマンを封じられると、フランスの攻撃は停滞していきます。

この試合でフランスの弱点は分かりました。つまりフィジカルが超一流のアフリカルーツの選手の上澄み部分を集めても、俊敏性やインテリジェンスをブレンドしないと、停滞する局面はあるということです。

それまでグリーズマン1人で補っていた部分が、決勝レベルの戦いで封じられると、カンテの俊敏性やポジショニングの上手さ、ポグバの意外性あるプレーが必要になると感じました。

 

試合展開としては、デシャンの采配は試合を盛り上げてくれました。

前半40分から投入したテュラムやコロムアニを活かしたプレス意識と高い身体能力によるボール奪取。そしてカマヴィンガの左SB起用での粘りづよい守備も、メッシの起点を封じていました。

コマンのフィジカルの強さで、メッシからボール奪取して、エンバペの同点弾の形をつくった形も見事でした。

 

アルゼンチンは身長170cm代の選手も多く、日本人と変わらないサイズ感の選手の多いチームです。

(日本と同じく)フィジカル寄りの戦い方に押し込まれることも多く、オランダ戦やフランス戦では2点のリードを守り切れずにPK戦までもつれる戦いとなりました。

W杯の90分や120分の戦いでは、フィジカル的なハンデは守備面で不利だと感じます。しかしそれでもアルゼンチンは最後に優勝をしました。

アルゼンチンが示してくれたのは、連携・献身性・メンタルの重要性。そして国として経験値が、プレイヤーとしてのメッシの存在が、チームを世界一に導きました。

W杯の戦いは、国ごとにベストなスタイルが異なります。

アルゼンチンのスタイルが2022年のサッカー界でも通用したことは、サッカーの多様性や成長性にとって、すごくポジティブな要素に思えます。

2位 日本2-1スペイン(GL第3戦)

ドイツに勝ち、コスタリカに敗れた日本が、第3戦でスペインに挑んだ大一番。

勝てば自力でグループ突破、引き分けは他会場次第、負ければ敗退という状況での試合でした。

この試合はスペイン相手に通用した日本の守備組織と、後半立ち上がりの逆転劇に尽きるでしょう。

戦前の予想通り、ボール保持できずに守備ブロックを作る展開。

そして前半13分にクロスからモラタに決められ早々と失点。

厳しい展開になりましが、そこから日本の守備は思い切りが出てスペインの攻撃に慣れてきます。

両センターバッグの板倉と谷口が、ペドリとガビを前までがっつり捕まえて、スペインに崩されてない形を構築していきます。

後半勝負の印象が強いですが、失点後は前半から前からハメる守備や、ボールを繋いでのカウンターを作り始め、スペインのチャンスは減っていきました。

そして後半開始から、堂安&三笘を投入。

前線が連動し、前田、三笘、伊東が前からハメて、堂安がもぎとった左足ミドルの同点弾。

シュートスピードはワールドクラスの一撃です。

さらにその直後に、逆転弾が決まります。

権田の自陣深いFKから始まった展開は、伊東、田中碧、堂安と繋がり、堂安の仕掛けから右足でゴール前に蹴り込んだボールは、前田を抜けて、三笘がゴールラインに1mm被ったとこで折り返し、田中碧が押し込みました。

VARの判定で必要になったラインギリギリのゴールは、今大会のシーンの最も話題となったシーンのひとつです。

 

その後は守る展開が続きますが、森保采配もすごかった。

スペインはジョルディアルバとアンスファティを左サイドに投入するタイミングで、日本も右WBに冨安を投入。

話を聞くと、元々冨安投入予定でしたが、スペイン陣営の動きが見えたので、急遽右WBでの投入に決めたそうです。

左WBの三笘の守備力も驚異的でした。フェラントーレス程度なら負けません。

その後、権田、吉田を中心とした守りで耐えてみせ、遠藤航も終盤投入で、最後まで守り切った。

スペイン相手に2-1で勝利。そしてグループEを1位突破。

もう、最高でした。ありがとうございます。

 

 

その後、スペインはトーナメント1回戦でモロッコ相手に(PK戦含めて)一点も取れず敗退します。

結果としては、スペインは守りやすかった。

フォーメーションは固定されており、システムの変更やリズム変更も少なく、アセンシオやファティなどの個を食い止めることができれば、戦いやすい相手ではありました。

スペインはリズムを変えられないので、この大会の日本の守備力なら守りきれるのも実力どおりともいえるでしょう。

 

W杯の舞台では、いかに局面局面で相手の苦手なことを続けられるか、リズムの変化をつけて試合をもっていくかが大事かと分かりました。

相手に主導権を握らせない、アルゼンチンやクロアチアは戦いの幅は広くて強いし、フランスも決勝でみせたように、デシャンの采配でチームの構図を大きくかえることも可能でした。

1位 日本2-1ドイツ(GL第1戦)

日本のカタールW杯初戦。

日本は立ち上がりこそ前線のプレスや中盤のボール奪取が機能します。

遠藤→鎌田→伊藤→前田の形で幻の先制点を奪います。(オフサイド判定)

しかし、そこから防戦一方。

前線からはミュラーが中盤まで下りてきて、ギュンドアンがビルドアップに変化をつけ、左のラウムが上がりはじめ、日本は取りどころがなくなります。

前半は1失点で、ボロボロに攻められまくります。

明らかに4バックの限界がみえました。

後半冨安投入で3-4-2-1に変更。

前から追い回す戦い方に舵をきり、ハマりはじめる。

後半10分には三笘&堂安の投入。

続けて浅野、その後に南野と交代カードを切り続けて数的優位をつくりはじめた。

後半30分の同点弾は三笘が仕掛け、南野が裏に抜け出してシュート。交代で入った南野のファーストタッチのシュートで、南野は完全にフリーでした。ドイツはマークの受け渡しができてなかった。

ノイアーが弾いたこぼれ球を堂安が押し込み日本同点!

鎌田、遠藤のダブルボランチでボールを奪い返し、両サイドのWBとセカンドトップの数的優位の攻撃陣でチャンスを演出する、打ち合いの後半の展開。

とくに遠藤は素晴らしかった。

キミッヒ相手にボールを奪いとるデュエルの強さを披露。

しっかり身体を相手にぶつけて、ボールを体の反対から足で引っ掛けて奪う遠藤の技術はドイツ屈指。

読み、フィジカル、俊敏性、気持ちの4点が突出していると思います。

決勝点は板倉のロングボールを、浅野が神トラップで抜け出して、一気にゴールまで迫り、ノイアーのニア天井に打ち込んだ逆転弾。

ドイツに攻め込まれ続けながら1失点でしのぎ切り、後半にミシャ式3-4-3で逆転した試合展開には大興奮しました。

攻撃陣に圧倒的なタレントはいませんが、質の高い攻撃陣の駒を全て使い切って、勝ち切った森保采配の「回答」には、衝撃を受けました。

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